第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

カンッ――!

火花が散った瞬間、頬に鋭い痛みが走った。
細い切り傷から温かい血が一筋、肌を伝う。

「っ……!」

ほんの一瞬の迷い。
その一瞬が、また傷を生む。

ディランなのにディランじゃない――
その事実が胸を締めつけ、腕を鈍らせる。
息が詰まりそうなほど苦しい。

ジョルジュは、その揺らぎを楽しむように目を細めた。

「いいねぇ……その迷い。
愛する男を傷つけられないだろう?」

ディランの声で、冷たく嘲るように笑う。

次の瞬間――

シュッ!

銀の刃が鋭く振り下ろされ、私は咄嗟に身をひねった。
だが完全には避けきれず、太ももに熱い痛みが走る。

布が裂け、血が滲む。

「くっ……!」

痛みが走るたび、迷いが胸を締めつける。
重い衝撃が腕に響き、足が後ろへ滑る。

ジョルジュは若い身体の反応速度を完全に使いこなし、まるで遊ぶように攻撃を重ねてくる。

「ほら、もっと見せてみろ。
その“迷い”が、私には最高の隙だ」


重い衝撃が腕に響き、足が後ろへ滑る。
呼吸が荒くなり、視界が揺れる。