だが——角を曲がった瞬間、空気がざらりと震えた。
「っ……来る!」
警告と同時に、通路の影が裂けるように揺れ、複数の魔宝獣が飛びかかってきた。
黒い毛並みを逆立て、赤い瞳が獲物を捉えている。
「お嬢様、下がって!」
セナが反射的に前へ飛び出す。
その動きは鋭く、迷いが一切ない。
「我が剣に従え——アクアマリン!」
淡い水色の光が剣を包み、氷の刃が閃いた。
魔宝獣の動きが一瞬で凍りつき、砕け散る音が通路に響く。
だが、息をつく暇などなかった。
反対側の通路から、さらに別の魔宝獣が飛び出す。
「紅く鋭く——我が想いに応えよ、スピネル!」
テオの剣が紅く燃え上がり、弧を描く斬撃が空気を裂く。
紅い光が魔獣の身体を切り裂き、火花のように散った。
「ありがとう、2人とも!」
言い終える前に、地鳴りのような唸り声が奥から響いた。
先ほどのものより明らかに巨大な魔宝獣が、壁を揺らす勢いで突進してくる。
胸が強く脈打つ。
——時間がない。
私は深く息を吸い、魔力を一気に解き放った。
「蒼き風よ——導け、ラピスラズリ!」
足元から蒼い風が爆ぜるように巻き上がり、私の周囲を駆け抜ける。
風は鋭い刃へと変わり、迫る魔宝獣へ一直線に突き進んだ。
「どきなさい!」
蒼い斬撃が魔宝獣を切り裂き、蒼い光の粒が通路に散る。
風の余韻がまだ残る中、私は前を睨みつけた。
「……ディランの気配が、もっと弱くなってる。急ぐよ!」
「はい」
「わかった!」
セナとテオが、緊張に満ちた表情で力強く返事をした。



