第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

タキが地を蹴った。

一瞬で距離を詰め、禍々しい剣が横薙ぎに振るわれる。
重く、荒々しい一撃。力任せなのに、魔力だけは異様に濃い。

「――っ!」

私は半歩引き、剣を流す。
ローズクォーツの光が弧を描き、衝突の瞬間、薔薇色と赤黒い魔力が火花を散らした。

「相変わらず、細けぇ剣だなぁ!」

「……無駄がないのよ!」

踏み込み、連撃。
花弁のような斬撃が舞い、迷宮の空間に淡い残像を刻む。

だが――

「効かねぇ!!」

タキの胸の魔宝石が、どくん、と大きく脈打った。

赤黒い光が爆発的に噴き出し、床の石が砕け散る。
魔力の暴風が渦を巻き、私は思わず後退した。

「くっ……!」

「ははっ! 見ろよルイ!
この力! これが――」

魔宝石が、悲鳴のような高音を発する。

「……あ?」

光が不規則に明滅し始めた。
血管のような亀裂が宝石に走り、タキの体に黒い紋様が広がっていく。

「……タキ、やめなさい!」

「うるせぇ!!
俺は、まだ……もっと……!!」

制御を失った魔力が、タキ自身を蝕んでいく。
動きは荒いが速く、膨大な魔力の攻撃。

「……っ、間に合わない!」