第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


「嬉しい…ありがとう!」

「ほらほら、食べて食べて!
ミルクティーもどうぞ」

湯気の立つカップを差し出され、私は両手でそっと受け取る。

「いただきます!」

「どうぞどうぞ!」

ひと口飲むと、やさしい甘さと爽やかな香りが口いっぱいに広がった。

「んー…おいしい。」

胸の奥がじんわり温かくなる。

「ありがとう、レオ。ずっとレオの料理が恋しかったんだよ」

そう言うと、レオは鼻の頭をかきながら、得意げに笑った。

「それは良かった! なんせ俺はお嬢さんの専属料理人ですからね!」

へへん、と胸を張る姿が可笑しくて、思わず笑ってしまう。

「これからまた大変なことになりそうですけど…
でも今は甘いものを食べて、自分を労ってください」

その言葉は、甘いデザートよりもずっと心に沁みた。

「レオ…ありがとう」

「はいっ!」

レオは満面の笑みを浮かべた。
その笑顔に、悩みがすっと溶けていく気がした。
レオは、私が最後の一口を飲み込むまで、ずっとニコニコと見守っていた。

「ご馳走様でした」

「お粗末様でした!」

レオは満足そうに胸を張る。
その明るさに、沈んでいた心が少しだけ軽くなる。

ふと、胸の奥に引っかかっていた言葉がこぼれた。