「レイさんはさー」
少し間を置いてから、レオが口を開いた。
軽い調子だけど、その目は探るように細められている。
「この迷宮には、詳しくないの?」
「いえ、詳しくは私にも……」
レイはそこで言葉を切り、眼鏡を指で押し上げた。
レンズに反射し、きらりと光る。
ひと呼吸置いてから、静かに続ける。
「むしろ、王城の地下にこんな構造があるとは知りませんでした」
その声音には、隠しきれない警戒が滲んでいた。
「それより――」
私は視線を上へ向ける。
「上は、どうなっていますか?」
「それが……大混乱で」
レイは簡潔に答えた。
「魔宝獣が出て、今はアラン殿下たちが何とか対処しています」
「……そうですか」
ルイの表情がわずかに硬くなる。
レイは続けた。
「陛下の仕業でしょうね。状況は、かなり深刻です」
その言葉に、空気が一段と重くなった。
「とにかく、我々は進みましょう」
レイがきっぱりと言い切る。
その背中はいつも通り冷静に見えるのに――
歩幅が、ほんの少しだけ速い。
焦っている。
状況が読めない迷宮、分断された王族、そして地上の混乱。
冷静を保ってはいるが、レイの内側には確かな緊迫があった。
私は剣を握り直し、前方の闇を見据える。
――ここから先、何が待っているのか。



