さらに奥へ踏み込んだ瞬間、テオが鋭く叫んだ。
「お嬢様、危ない!」
テオが抱き寄せるように、自分の背後に私を庇い、セナが私の腕を引く。
次の瞬間、テオの周囲だけがゆらりと揺れ、空間が切り取られたように遮断された。
まるで薄い膜が張られたように、そこだけ世界が歪んでいる。
「て、テオ……?」
彼は一瞬、手をふわりと振った。
セナが低く呟く。
「……魔術空間ですね。こちらからは見えるけど、向こうからは見えないタイプの」
「そんな……」
「騎士団で聞いたことがあります。あの空間に入ると精神作用の技をかけられて、
その人が“最も大切だと思う相手”が現れる。
そして――その相手を傷つけられないと、出られない」
「それって……」
「はい。テオにとって大事なのは、お嬢様です」
その言葉と同時に、空間の中に“私そっくりの人形”がふわりと姿を現した。
「わ、わたし……!?」
思わず声が裏返る。
「よく似ていますね……」
セナが小さく息を呑んだ。



