「あ、やば。切っちゃった」
テオがそう言った瞬間、石像の数がさらに増えた。
――そのとき。
「お嬢様、下がってください」
「わかった」
「テオも」
「はいはーい」
私たちの返答を聞くと、セナは静かに剣を構え、低く詠唱を始めた。
「我が剣に従え――アクアマリン」
淡い蒼光が刃を包み、冷気が部屋を満たす。
次の瞬間、
剣から氷の矢のような斬撃が放たれた。
――ズドン。ズドン。ズドン。
正確無比。
囲んでいた石像の頭部を、寸分違わず撃ち抜いていく。
砕け散った石片が床を転がり、
部屋に静寂が戻った。
「……全部同時に壊せば、関係ないですね」
「まあ、そうね」
思っていたのとは違うけど……結果オーライ?
「さすが、セナ!」
私がそう言うと、テオも笑った。
「へぇー、やるじゃん」
セナは剣を下ろし、静かに息を整える。
「ありがとうございます」
淡々とした声。
氷の矢が消え、アクアマリンの宝石も元の姿に戻った。
「それにしても……」
床に散らばる石片を見渡す。
「こんな罠を仕込むなんて」
「相当、奥まで来られたくないんだろうな」
テオが肩をすくめる。
「――あのタヌキジジイ」
名前を出さずとも、全員が同じ相手を思い浮かべていた。
「行きましょう」
セナが前を見据える。
「うん」
私は頷き、迷宮の奥へ視線を向けた。
まだ、こんなもんじゃ終わらない。



