第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

ティアナside

一応、ディランに連絡が取れないか、コンパクト型の通信型魔宝具で呼びかけてみた。
けれど返ってきたのは、冷たい沈黙だけ。

「……ダメね」

手のひらの魔宝具はかすかに震えるだけで、反応はまったくない。
横から覗き込んだセナが眉を寄せた。

「阻害されていますね。完全に遮断されてます」

その言葉に、胸の奥がざわつく。
王国の真下に、こんな巨大な迷宮を隠しておくなんて——。

「それにしたって、王国の下にこんな迷宮って……とんだ無駄遣いよね」

思わずため息まじりに言うと、テオが肩をすくめた。

「確かに……。管理費だけで破産しそうだよねーこれ」

彼は壁を軽く叩き、響く音に目を丸くする。
どうやら相当な強度らしい。

「伯爵家にはないの? こういうの?」
と、テオがこちらを向く。

「うーん、多分ないと思うけど……」

少し考えてから、私は苦笑した。

「今度、屋敷の地下を探してみるかな」

「そのときは俺もおともする!」
テオが勢いよく手を上げる。
あまりに楽しそうな顔に、思わず笑ってしまった。

「ありがとう。頼りにしてるわ」

胸を張るテオと、呆れたように微笑むセナ。
不安な状況のはずなのに、3人のやり取りが少しだけ心を軽くしてくれる。