第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

ユウリside

――お嬢様!

声にならない叫びが、胸の奥で弾けた。

私たちは別の方向へ落とされた。
けれど、セナとテオが即座に動いたのは見えた。

……大丈夫。
あの2人が一緒なら、きっと。

問題は、こちらだ。

落下しているのは、私と――
レオ、そしてルイ。

「理を整えよ――フローライト」

低く、静かに紡いだ詠唱。
灰色の透明な光が波紋のように広がり、私たちの身体を包み込む。

衝撃はやわらぎ、どうにか地面へと着地した。

「ありがとう〜、ユウリちゃん」

ルイが、いつもの調子で笑う。

「び、びっくりしたー!」

レオも大きく息を吐いた。

「それより……」

私は周囲を見渡しながら口を開く。

「お嬢様とは、はぐれてしまいましたね」

「……そうね」

ルイも、わずかに表情を引き締める。

「困ったなあ」

レオが頭を掻いた、その時――

迷宮の奥で、何かが軋んだ。

静寂の中に、不穏な気配が滲み出す。

ここは、じっとしていていい場所ではない。