第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

レイside

ティアナ様たちが動き出した。
少し遅れて、陛下も席を立つ。

殿下から言われている。
**「陛下から目を離すな」**と。

私は任務として、気配を殺してついていった。

禁書庫――そう思われる場所に陛下の騎士たちが集っている。
ティアナ様たちが見つかったのかと胸がざわつき、剣を握りしめた。

こっそり中を覗き、息を呑む。

殿下の写真、資料の山。
ディラン殿下が“器”……?

理解した瞬間、背筋が冷える。
すぐに殿下へ伝えなければ。

踵を返そうとしたその時。

「動くな」

陛下の騎士。
しまった――。

「レイか」

陛下がこちらを見据える。
なんで冷えた目だ。


「……はい、陛下」

「気づいたようだな」

「はじめから、殿下を利用するつもりだったのですか!」

「ああ。よくディランに仕えてくれた。感謝しているよ。
だが――それも今日までだ」

ティアナ様の髪が床に落ちている。
スミレ色と桃色。


「なんてことを…
ティアナ様はどこにいるのですか?」

「そんなに心配なら、同じ場所へ行けばいい」

「……は?」

「迷宮だ。そこの下だ」

指さされた先は、奈落。

「大丈夫だ、レイ。お前も“そこ”へ行かせてやる」

強い力で背を押される。
抵抗して剣を振るうが、遅い。

落ちていく。

殿下――。