第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「実にいい。
…さあ」

陛下は、淡々と告げた。

「迷宮へ」

その言葉と同時に、
掴まれていた体が、乱暴に突き飛ばされる。

視界が傾き、
私は闇の奥へ――

――奈落の、底……?

そう思った瞬間だった。

迷うことなく、
セナとテオが私の落ちた穴へと身を投げる。

「お嬢様――!」

「ティアナ!」

その声が、闇に吸い込まれていく。

「待って!」

ルイの叫びと同時に、
ユウリも、レオも、慌てて後を追った。

だが――

床が、再び音を立てて割れる。

「――っ!」

ルイ、ユウリ、レオの足元が崩れ、
3人は、私たちとは別の穴へと落とされた。

伸ばした手は、届かない。

声も、重ならない。

闇が、すべてを分け隔てる。

こうして――
私たちは、完全に引き裂かれた。

落下の風が、耳元を切り裂く。

胸の奥が、ひどく冷えた。

でも――

私は、目を閉じなかった。

「……絶対に、負けない」

震えた声だった。
けれど、その言葉は闇に飲まれず、まっすぐ落ちていった。