「古川、走れっ!」
私より一歩先を走り出した黒崎くん。
「黒崎くん、待って!!」
私も黒崎くんの後を追って走り出した、その時だった。
キキーーっ!!
耳を貫くようなブレーキ音。
ドンっ。
鈍い音。
誰かの悲鳴。
私の目の前には、一台のトラックと、アスファルトに倒れている黒崎くん。
世界が急に色をなくす。
ビニール袋が地面に落ちて、中身がアスファルトに転がった。
時間がぐにゃりと歪んだみたいに、全てが遅くなる。
「……え?」
彼の名前を呼んだはずなのに、声がうまく出せなかった。
道路の向こう側で人が集まり始める。
誰かが、救急車を呼んでいるのも見える。
黒崎くんの体のあちらこちらから流れる血。
赤色灯の光が、夕暮れの空を何度も切り裂いた。
動けなかった。



