黒崎くんはしばらく私から顔を背けていたけど、そっと小指を差し出してきた。
あの頃と、同じ仕草。
「約束しよ」
何を?言葉の代わりに、眉を少し上げて聞く。
「離れることなく、ずっと一緒にいるって」
その言葉で、また昔のことを思い出した。
あの頃は離れる私に、また会おうという約束だった。
だけど今は、恋人として、もう、どこにも行かない。
ずっとそばにいる。
とても幸せな約束だ。
私も、そっと小指を差し出した。
そして、ゆっくり絡まった小指を大きく上下に揺らした。
お互い照れて、指切りをしたまま笑い合う。
淡い夕暮れの中で、私たちはやっと、恋人になった。
この、当たり前が、もうすぐ失われるなんて、誰も知らない。



