蛍が消える、その夜に


朝のホームルームが終わると、教室内はまた騒がしさを戻した。

授業と授業の合間のこの10分程の時間が苦痛だ。

トイレに行くくらいしか時間の潰し方を知らないから。

だけど、転校早々トイレにこもるのも変な噂が立ちそうだから、私は意味もなくスクールバックの中をあさり、授業のチャイムを待った。

待ちたかったのに……。

「何か忘れ物?」

「え?」

また隣から声をかけられ、鞄の中をあさる手をピタリと止めた。

瀬戸キラ。さっき自己紹介をされた派手な男子だ。

まだ鞄の中に入れたままの手を見る瞳が、緊張のあまり震える。

垂れる横髪で顔を隠し、どう答えたらいいのか正解を考えた。

反応の遅いコンピューターが必死に動くように、ジジジ、ジジジと頭の中が泣く。

「いやほら、さっきから鞄の中を触ってるから、何か忘れ物でもしたのかなって思って」

まだ何も答えていないのに、どんどん話を進めていく。

「転校してきたばっかだから教科書とかなくても別に先生怒らないっしょ。俺の見せてやるし」

ありがた迷惑。

私は彼を振り返ることなく、横髪をさらに前に垂らすようにして俯いた。

「あ〜! さては、キミ俺のこと信用してないな〜?」

は?