「はい、チーズ」
カシャ。
スマホのシャッター音。
でも黒崎くんは、すぐにスマホを下ろさなかった。
「もう一枚」
「え?なんで?」
「だってさ」
黒崎くんが少しだけ笑う。
「今の俺、変な顔だった」
「うそだー」
そう言って笑った瞬間――。
カシャ。
またシャッター音が鳴った。
「ちょっと!!」
突然の出来事に焦って黒崎くんを見ると、黒崎くんは私にスマホの画面を見せてきた。
「ほら見て。自然な表情」
画面に映っていたのは、黒崎くんを見上げて笑う私と、きちんと画面を見て眩しいくらいの笑顔の彼が映っていた。
「ずるい!自分だけいい顔してる!」
「なに?かっこいいって?」
不敵に笑う黒崎くん。
「そ、そんなこと言ってない!」
図星。
だけど、そんなこと認めるわけにいかず、照れ隠しのために頬を膨らませて、黒崎くんを軽く叩いた。
それから逃げるように、走っていく黒崎くん。
「そんな怒らなくても後で古川にも送るよ」
走りながら黒崎くんが言う。
ただの修学旅行の写真。
でもきっとーー。
この一枚は、何年たっても忘れない気がした。



