蛍の季節に、キミはまた会いに来る


その言葉の意味を深掘りせず、瀬戸くんが『そーなんだ』と返す。

初めて飲んだ本格的な抹茶は少し苦かった。

黒崎くんは一口飲んで苦そうに顔を歪めている。

「まぁ、苦いけど、その後すぐに団子食べたら口の中がちょうど良くなるな」

抹茶を飲んですぐに団子を口の中に入れる黒崎くんの動きが面白くて、その度に笑ってしまう。

私も真似をすると、黒崎くんもおかしそうにケラケラと笑っていた。

清水寺へバスで移動中。

やっぱり渋滞にハマり、予定時間を20分過ぎてしまったみたいだ。

清水寺へ続く参道でお土産などをゆっくり見るつもりだったけど、ここでの買い物は難しそうだ。

バスが到着すると、みんな急足で清水寺へ向かった。

昼過ぎだからか、体を斜めにして歩かないとぶつかってしまうくらい人の数が増えていた。

「うわっ!!」

人に押さそうになった私の手首を、黒崎くんがグッと掴む。

「あっぶねぇ」

腕を掴まれながら黒崎くんの胸に収まる体勢になってしまい、緊張と驚きで体の全細胞が震え上がる。

すぐに離そうと思った。

こんなところ誰かに見られたりでもしたら、また面倒くさいことになる。

だけど、なぜか、私の中だけ時間が止まってしまい、離すことができなかった。

先に手を離したのは、黒崎くんの方だった。

私は、彼の触れていた手首をさする。

ほんのり、温かい。

「ごめん。痛かった?」