蛍の季節に、キミはまた会いに来る


「古川」

黒崎くんの声が私に向いたので、目を開けて隣に立つ彼を見上げた。

「そういうことだよ」

その言葉の意味がわからなくて、首を捻る。

「古川の中で今の悩みはめちゃめちゃ大きいものなのかもしれないけど」

「………」

「この自然の中では、ちっぽけだってこと」

……黒崎くん。

「俺らだけじゃなくて、周りのみんなもそう。め〜っちゃちっさい」

『もうね、こんくらい』と、黒崎くんは親指と人差し指がくっつきそうなくらい近づけて、おまけに目も細くした。

「どんな悩みか知らないけど、ここに来て全部川に流せばいいんだよ」

「………」

「そしたら、もう、コロコロコロコロ〜ってあっという間に流れて見えなくなるんだから」

そう言って、黒崎くんが不敵に笑う。

思わず、私も笑った。

「いいじゃん」

「え?」

「笑った顔、めっちゃいい」

ボッと顔に火がついたかのように、急に熱を持ち始めた。

ようやく落ち着いた鼓動も、また激しさを増し、体が酸欠になる。

もう薄暗くなっててよかった。

赤くなった顔、見られたら困る。

スーッと、私の頬の横を小さな光が横切った。

黒崎くんの顔の周りにも。

1匹、2匹……。

暗がりの中徐々に増えていく蛍の光が、私たちをそっと包み込んでくれる。

「……キレイ」