黒崎くんの言葉に少しだけ笑って、まだ激しく動く心臓を落ち着かせるために深呼吸をした。
「だって、女の子だと思ってたから、あの時のあの子が黒崎くんだなんて思わないよ」
「ハハハ。確かに」
穏やかに流れる川のせせらぎ。
風が吹くたびに揺れ動く、湿った草。
走り続けて疲労困ぱいの身体を、癒してくれた。
「どう?」
黒崎くんに聞かれて、「うん?」と眉を上げる。
「自然の音」
黒崎くんはそう言って、風に揺れる木々の葉を見上げて目を閉じた。
「古川も聞いてみ」
そう言われて、黒崎くんの隣で静かに目を閉じる。
一定の川の流れの上に、不規則に揺れる木々の葉の擦れる音がかなり、そこにカエルの鳴き声が重なった。
鳩の鳴き声も聞こえる。
自然のオーケストラの奏でる壮大なメロディを、特等席で聴けるなんて、なんて贅沢なんだろう。
「ここで目を閉じて静かに周りの音を聞くとさ、なんか、自分の存在って物凄く小さいんだなって思わない?」
確かに、そう思う。
自然の力には、勝てない。



