「女の子だと思うのも不思議じゃないよ。だけどこの写真がどうかしたのかい?」
豊田さんの言葉に答えることが出来なかった。
真衣さんじゃなかった。
黒崎くんだった。
私たち、あの頃に一度会っていたんだ。
あのおじいさんは豊田さんだったんだ!!
あの約束を覚えているのは私だけかもしれないけれど、やっぱりホタルを見に行かなくちゃ。
今から行けば十分間に合う。
黒崎くんと約束したあの川辺に!
「あ!聖菜ちゃん!」
豊田さんの声を背中に受けて、家を飛び出した。
湿気でジメジメする。
汗ばむ肌が風に吹かれる。
走って走って走って。
急に走り出した体が驚いて、呼吸が苦しくなる。
それでも、私は空気を無理矢理飲み込むようにして走った。
田んぼを抜けると、小さな川が流れている。
私は足をとめ、膝に手をついた。
昼間はただの細い川なのに、夜になるとこの場所はまるで別世界になる。
草の匂いを含んだ湿った風が頬を撫で、川の水は街灯の灯りを受けてゆらゆらと揺れていた。
その暗がりの中に、黒崎くんはいた。



