蛍の季節に、キミはまた会いに来る


『2−3』と書かれた教室の前で立ち止まる。

先生が先に入り、合図を出すと言った。

騒がしかった教室は、いったん静まり返る。

けれど——

「転校生」という言葉に、再びざわめきが広がっていく。

期待と好奇心が混ざった声。

そのざわめきが、胸の奥を強く揺らした。

ごくり、と唾を飲み込む。

——ここでは、何も起こりませんように。

大丈夫。

ここには、私を知っている人はいない。

友達なんて作らなくていい。

卒業まで、一人で過ごせばいい。

震える腕をそっと押さえながら、先生の合図を待つ。

「古川! 入ってこい」

びくり、と肩が跳ねた。

——行きたくない。

頭では分かっているのに、足が動かない。

大丈夫、大丈夫。

何度もそう言い聞かせるのに、“そんなはずがない”と、体のほうが拒んでくる。

「古川? どうした?」

しびれを切らしたのか、担任がドアを開け、手招きした。

自分のタイミングで入りたかった。

けれど、もう——それもできない。