蛍の季節に、キミはまた会いに来る


日曜日当日、少し緊張して駅に向かった。

時間はまだ早い。

だけど、足がいつもより早く動いていた。

〝デート〟喜んでいいのかもわからない。

彼はただ、私と出かけることを〝デート〟と言っただけ。

深い意味はない...。

「早かったな」
 
駅前で悶々と考えていると背後から声がかかりおもいっきり振り返った。

目を丸くすると、黒崎くんが苦笑した。

「なんだよ。なんだか俺、不審者みてぇじゃん」

彼に言われて、慌ててそうじゃないと否定するも、説得力はなかったらしい。

いつもの制服姿とは違い、少し大人っぽく見える。

柔らかいベージュのワイドパンツに、白いTシャツを着て、その上に爽やかな薄いブルーのカーディガンを羽織っている。

彼が中学生だって、誰が思うだろうか。

それに比べて私は、デニム生地のショートパンツに、ロゴの入った白いTシャツ。
そして、ブルー系チェックのオーバーサイズの長袖シャツを羽織って、どこからどう見ても、中学生だ。

私がその差に恥ずかしくなって俯いていると、黒崎くんにマジマジと見られていることに気がついた。

「え、それって大丈夫なの?」

あまりの子供っぽさに、流石に引いた?

さらに落ち込んでしまい、地面にめり込んでしまうんじゃないかというほど、項垂(うなだ)れた。

「後ろから見たら、なにも履いてないように見えるから。ちょっとドキッとする」

黒崎くんの頬が、少し赤くなっている。

オーバシャツで覆われる私の太ももあたりを見て、目を泳がせていた。

「やばい。めっちゃ可愛い」

口元を隠しなあがらぼそりと言った黒崎くんの声が聞こえてしまい、私もまた赤面してしまう。

黒崎くんは行き先は決めていなかった。

駄菓子屋や、この町唯一のゲームセンターそして、小さなショッピングモール。

すべての場所に行った。

途中、たこ焼きを食べたり、クレープを食べたり。

その間は、とても他愛もない会話。

最後は、ホタルがたくさんみられるという、この前清掃したばかりの川辺にやって来た。

空はもう、あかね色に染まりつつあった。

川の流れる音が私の全身を包み込み、思わず目を閉じ大きく息を吸う。

葉や土の湿った匂いが好きだ。