私の声に、黒崎くんはただ私を見下ろした。
「あのふたりに、黒崎くんの存在を話したらいけないの?」
『え?』
「黒崎くんが戻ってきたってこと、他の人に知られたらいけないって、ルール、ある?」
私の視界の隅で、黒崎くんが首を横に振ったのがわかった。
『あっ!おいっ!古川!!』
首を振っている途中で突然歩き出した私の背後に、私にだけ聞こえる黒崎くんの声が刺さる。
瀬戸くんと真衣の前まで歩くと、すぐに私の隣に黒崎くんが駆け寄ってきた。
私は一度黒崎くんを見上げる。
すると、瀬戸くんと真衣も私の視線を追って斜め上を見た。
不思議そうに首を傾げている。
「ふたりとも、ちょっと来てくれる?」
瀬戸くんと真衣がお互い眉を寄せて目を合わせた。
私はふたりをひとけのない屋上のドアの前まで連れて行き、ごくりと唾を飲み込んだ。
どう、説明をしよう。
ふたりには、何も見えていない。
どう伝えたら、わかってもらえるだろう。
「え、なになに?なんか、あった?」
普通じゃない私の様子に、いつもおちゃらけている瀬戸くんの声が慌てる。
私が無言で黒崎くんを見上げると、ふたりの目もまた、同じ方向を見上げた。
緊張した表情で、黒崎くんが頷く。
「あ、あのさ。ちょっと、話があるんだけど」
私が言った瞬間、朝のホームルーム開始のチャイムが鳴った。
だけど、誰もそれを気にしていない。



