私は、3年の自分の教室に向かう途中、去年の2年生の教室に寄った。
突然教室に入ってきた上級生に周りは驚いている。
私は小さく2年生たちに頭を下げて、黒崎くんが教室を見回るのをじっと見ていた。
教室の後ろにあるカバンを入れる棚。
『たっちゃん』と、薄く彫られた机は、窓際の一番の後ろにあった。
瀬戸くんが彫ったやつだ。
涙を流しながら教室をぐるりと見る黒崎くんを見て、私も涙目になっていく。
ここで泣くわけにはいかない。
また変な人だと思われてしまう。
黒崎くんにとっては、約1年ぶりの教室だ。
ここで過ごすことが当たり前だなんて、決して思ってはいけないってことを、黒崎くんが私に教えてくれている。
「あれ?聖菜?こんなところで何してるの?」
3階の3年の教室に向かおうとしていた真衣が、2年の教室を覗く私を見つけて訝しげに眉を寄せる。
その横には、瀬戸くんもいた。
「お、本当だ。なに?聖菜ちゃん、もしかして教室間違えた?」
冗談まじりに笑いながら瀬戸くんが言う。
そのふたりの声に気づいた黒崎くんが、ゆっくりと、しっかりとした足取りで教室から出てくる。
久しぶりの再会に切なく揺れる黒崎くんの瞳。
だけどもちろん、ふたりは彼に気づくことはない。
私の横に黒崎くんがいるのに、二人の目は私だけを見ている。
肩を並べる黒崎くんを見上げていたら涙がこぼれそうになって、わざと目を逸らす。
「ねぇ」



