「ただし、絶対に破ってはいけない、ルールがあるんだ」
「え、なに?」
「なんでも叶えてくれるノートだけど、生き返りたいと願うのは絶対にダメ」
その言葉に胸が軋んだ。
なんでも叶えてくれると言いながら、どうしてそれは叶えてくれないの?
「そして、このノートに願いが書けるのは、俺だけ」
「………」
「もし、他の誰かが書いてしまったり、紛失してしまった時には、もうその時点で終了」
「………」
「甦りの時間は、このノートが使い終わる、1週間だけ」
まだ信じられなかった。
本当にこんなことあり得るのだろうか。
黒崎くんのことが忘れられなくて、私が作り出した幻想だろうか。
だけど、こんなにもはっきりと声が聞こえることってある?
混乱している私に、黒崎くんは困ったように笑っていた。
「ここ、見て」
そう言って、ノートを1ページめくった。
”蛍の季節になったら、また古川に会えますように”
そう書かれている。
「これで、ちょっとは信じれる?」
コクンと頷いたけど、本当はまだ信じられない。
初めての経験だから。
私がまだ混乱しているのが伝わったのか、黒崎くんが次のページをめくり出した。
そして、2日目に叶えたい願いを、ノートに書いている。
蛍が夜空にちらちらと舞い、川面に光が揺れた。
湿った土と水の匂い。少し冷たい川風が髪を撫でる。
”古川に、触れられますように”
書き終えると、一瞬、風が止まって蛍の光が、少し強く瞬いた気がした。
目の前にいるのに、触れられない私たち。
書いたノートのページを私に見せ、黒崎くんは切なく微笑んだ。



