蛍の季節に、キミはまた会いに来る


どうして世界は何もなかったみたいに続いていくんだろう。

胸の奥にぽっかり空いた穴だけが、本当に彼がいなくなった証だった。

文化祭は、予定通り行われた。

彼が死んだからって、学校行事が変わることはないし、彼と関わってこなかった人にとっては、何も変わらない日常。

変わったのは、私だけで、正直、クラスでやることだって何も変わらない。

ないのは、彼の姿だけ。

彼の靴箱も、その中に残る上履きも、教室のロッカーも机も。

そのままの形で残っている。

確かにクラスメイト達もショックを受けていたけれど、だけどそれは最初だけ。

1ヶ月、半年、1年と過ぎるごとに、黒崎くんのことはみんなの記憶の中に消えていった。

私もまた、表では平気なふりをする。

そうしなければ、いけなかったから。

いつまでも塞ぎ込んでいては、周りに気を使わせるだけだし、彼がまた戻ってくるわけでもない。

わかってる。

そんなこと分かってはいるんだけど、そんなに前向きになれるほど、私はできた人間ではなかった。


私はもう、中学3年生。

高校受験だってしなければいけない。

だけど、あれから抜け殻状態だ。

真衣と瀬戸くんが私を気遣って声をかけてくれるけど、静かに微笑むだけでそれ以上のことはできなかった。

もう、あれから1年も過ぎたというのに、笑うことは、まだできない。

彼がいなくなっても、ずっと、あの川辺には足を運んでいた。

いないって分かってる。

それでもやっぱり、川辺だけが、彼を身近に感じられる、唯一の場所だから。