蛍の季節に、キミはまた会いに来る


気づいたら、声が漏れていた。

震える足で、棺の前へ歩いた。

クラスメイトのすすり泣く声。

黒崎くんのお父さんとお母さんの、泣き崩れる声。

その光景を見た瞬間、私の中の何かが崩れた。

「……ねぇ」

私は、黒崎くんの頬にそっと手を伸ばす。

冷たい……。

落ちる涙が、棺の中に入っていく。

「……そろそろ起きてよ、黒崎くん」

窓の外で、雨が少しずつ強くなっていく。

まるで空まで泣いているみたいだった。

「文化祭、まだ終わってないよ……」

かすれる声。

ついこの前まで、私の横で笑っていたのに。

文化祭、誰よりも楽しみにしていたのに。

「一緒に、みんなを驚かそうって約束したじゃん!」

「聖菜」

棺に強く掴まる私を、真衣が静かに引き剥がそうとする。

真衣の涙を我慢する声も聞こえた。

「もう……やめな」

嗚咽を飲み込む真衣が、よろける私の肩を支えてくれる。

その横に瀬戸くんも来た。

瀬戸くんも、黒崎くんの眠る棺に手をあて、苦しそうに涙を流していた。