蛍の季節に、キミはまた会いに来る


「あなたは、大丈夫?」

黒崎くんのお母さんの優しい声。

私はただ、小さく何度も頷くしかできない。

ガタガタ震える私の肩を支え、集中治療室の方を見ていた。

「黒崎くん、まだ出てきません!どうしよう!どうし……」

過呼吸ぎみなる私を、豊田さんとお母さんが宥めてくる。

だけど、その手も震えていた。

まだ……?

まだ黒崎くんは出てこないの?

黒崎くんっ!!

強く目を閉じると、集中治療室のドアの開く音がした。

医師が中から静かに出てくる。

だけど……。

その出てくる速度と、医師の表情から、胸の奥が冷たくなった。

嫌な予感が体の中を走る。

医師は私たちの前にたち、ゆっくり頭を下げた。

「……残念ですが」

その言葉だけで、世界が崩れ落ちた。

「全力で処置を行いましたが……」

続きはもう、聞こえなかった。

耳の奥で、何かが切れる音がする。

黒崎くんのお母さんが声を震わせる。

「……助からなかったんですか?」

医師は、静かに頷いた。

「申し訳ありません」

……嘘でしょ?

「嘘、ですよね……?」

「………」

「だって、さっきまで……」

涙が一気に溢れ出す。