蛍が消える、その夜に


「俺の外見がこうだからって真面目に授業受けてないとか思ってる? それなら残念〜。俺ちゃんと教科書持ってますから〜」

なんなのこの人。

私が答える前に勝手に話を進めないで。

この人、会話する気ないでしょ。

私のことは放っておいて。こんな地味は女、無視していいから。

というか、ぜひそうして。お願いだから。

彼のしつこさに耐えかねていると、突然教室のドアが大きな音で開き、彼の興味が私からドアの方に移った。

「お〜! 達也〜! どうした、今日はやけに早いじゃん〜」

よかった……。

やっと解放された……。

周りにバレないように小さくため息をつき、こわばっていた体の力を抜く。

だけど、私の後ろの席から物音がしてまた体が硬直した。

嫌な予感がしたから。

私の後ろの席は空席だった。

この席は、“彼”の物。

確認しなくたってわかる。