去年の冬、お母さんが亡くなった。
体が弱く、入退院を繰り返していたお母さんは、少しずつ痩せていき、最後は病に勝てなかった。
それでも——
お医者さんは言っていた。
お母さんの心臓は、とても強かったのだと。
宣告されていた余命より、五年も長く生きたのだから。
生前、お母さんはよく話していたらしい。
もし叶うなら、今暮らしている東京ではなく、生まれ育った田舎に戻りたい、と。
だけど、私の学校やお父さんの仕事のこともあって、その願いは叶えられなかった。
だから私は、お父さんと話し合い、お母さんの故郷へ行くことを決めた。
今さらそんなことをしても、お母さんはもういない。
それでも——
亡くなった今だからこそ、願いを叶えてあげたかった。
それに、東京にいても、もう何もいいことなんてない。
私は、東京じゃないどこかへ行きたかった。
知り合いもいない、何も知らない場所へ。



