ゲームがしたい! ぜったいあけたい、おとうさんのみまもりロック

 よし、今日こそ絶対に解読してやる!
 小学四年生の陽太は、腕まくりをしてゲーム機を手に取った。
 おとうさんが設定した”みまもり機能”のせいでゲームは一日一時間しかできない。
 しかもパスワードがかかっていて勝手に時間を増やせないようになっている。
 四ケタの数字……おとうさんが絶対忘れないやつ。 
 誕生日? 違う、それはもう試した。結婚記念日? それも失敗。
 好きな野球選手の背番号? それも×だった。
 うーん……
 その時、陽太はひらめいた。
 おとうさんの一番大切なもの。
 おとうさんはいつも言っている。俺の宝は家族だって。だったら——家族の誕生日を組み合わせたやつじゃないか?
おとうさんが七月、おかあさんが十一月、ぼくが三月。
 陽太はニヤリと笑った。

 0715、1121、0303……全部試したけど、全部違った。
 もうやだ!
 陽太がゲーム機をソファに投げようとした時、玄関のドアが開いた。
「ただいまー」
  おとうさんだ。
 陽太はあわててゲーム機を背中に隠した。
「あれ、陽太。そんなとこで何してんの」
「べ、べつに!」
  おとうさんは冷蔵庫からジュースを取り出し、何気なく言った。
「あー疲れた。こういうときはゲームでもしたいなあ」
「……え?」
「おとうさんもゲームしたいんだけどさ、みまもり機能のパスワード、忘れちゃったんだよね」
 陽太は固まった。
「……え?」
「設定したのが半年前だろ? なんにしたか忘れちゃって。おとうさんもゲームしたいのに自分でロックかけて自分で困ってんの」
 おとうさんはへらへら笑った。
「陽太、何かヒントない?」
 部屋に沈黙が流れた。

「……つまり、おとうさんも、ゲームできてないってこと?」
「そうそう。情けないだろ〜」
 陽太は力が抜けて、その場にへなへなと座り込んだ。
 一時間以上、陽太は必死にパスワードを解こうとしていた。なのに敵のおとうさん本人も、忘れて困っていたのだ。
「……アホだ」
「え、何か言った?」
「なんでもない!」

 結局その日の夜、二人でゲーム会社のサポートセンターに電話して、みまもり機能を解除してもらった。
 新しいパスワードをおとうさんが設定しながら、こそっと陽太に見せてくれた。
「1234」
「……それ、一番ダメなやつじゃん」
「忘れないから仕方ないだろ!」

その夜、陽太とおとうさんは二時間、並んでゲームをした。
画面の中では、二人とも同じところで何度も失敗していた。
みまもり機能はもう、誰も気にしていなかった。