白ねこのココと、あまい森のひみつ

 翌日の朝、店に開けると、一人の少女が待っていた。
 十歳くらいの女の子。しかし、顔色が悪く、痩せ細っている。
「助けてください……」
 少女の母親が泣きながら懇願する。
「娘が病気で、何も食べられないんです。医者にも見せましたが、治らなくて……」
 話を聞くと、少女は「魂の萎え病」という難病にかかっているという。心が弱っていき、最終的に食事も水も受け付けなくなる病だ。
「何とかしてあげたい……」
しかし、私は医者ではない。何ができる?
その時、頭の中の知識が答えを教えてくれた。
「お菓子魔法なら、治せるかもしれない」
厨房にこもり、特別なお菓子を作った。
材料は、森で採れる薬草と、遺跡で学んだ特別な甘味料。そして、最も大切なのは、込める思い。
「この子が元気になりますように」
祈りながら、丁寧に生地を混ぜる。
オーブンで焼き上げる。
完成したのは、虹色に輝く小さなクッキーだった。
「これを食べさせてみてください」
母親が、少女の口にクッキーを運ぶ。
少女はゆっくりと噛み、飲み込んだ。
その瞬間、彼女の体が光に包まれた。
「これは……」
光が消えると、少女の顔色が明らかに良くなっていた。
「お母さん、お腹空いた」
少女が初めて笑顔を見せた。
「娘が! 娘が喋った!」
母親は泣き崩れた。
その後、少女は徐々に回復し、一週間後には完全に元気になった。
噂はすぐに広まった。
「もふもふカフェの主人は、魔法のお菓子を作れるらしい」
「病気を治す力がある」
次々と、病人や怪我人が店を訪れるようになった。
すべての病気を治せるわけではない。しかし、心の病、ストレスによる体調不良、軽い呪いなどは、お菓子魔法で改善できた。
「ココ、あなた、まさか……」
エリザベート嬢が問いただす。
「魔法使いだったの?」
「正確には、お菓子魔法の使い手、です」
事情を説明すると、彼女は理解を示してくれた。
「素晴らしいわ。あなたの才能は、お菓子を超えていたのね」
しかし、すべての人が好意的だったわけではない。

「魔法のお菓子だと? 怪しい」
「魔女の仕業ではないか」
一部の保守派は、私を魔女扱いし始めた。
「魔女狩りだ!」
ある日、暴徒が店を襲撃しようとした。
「待ちなさい!」
王女が現れ、暴徒を制止する。
「ココは魔女ではありません。彼女のお菓子は、人を幸せにするためのものです」
「しかし、殿下……」
「魔法が悪だと決めつけるのはやめなさい。大切なのは、その力をどう使うかです」
王女の権威で、暴徒は解散した。
しかし、問題は残った。
「ココ、少し慎重になった方がいいわ」
エリザベート嬢が忠告する。
「魔法は人々を不安にさせる。もっと段階的に、理解を得ながら使うべきよ」
彼女の言う通りだった。
急ぎすぎた。人々の心の準備ができていないうちに、魔法を見せすぎた。
「これからは、もっと慎重に」
そう決意した矢先、新たな問題が発生した。
「ココ様、大変です!」
メイが慌てて報告してくる。
「王女殿下が倒れられました!」