白ねこのココと、あまい森のひみつ

南の大陸での旅も、そろそろ区切りをつける時が来た。
港町で船を探していると、見覚えのある船を見つけた。
「あれ、蒼の風号じゃないですか?」
「本当だ!」
以前、東の大陸へ行く時にお世話になった船だった。
「あんたたち! 生きてたか!」
船長が驚いて叫ぶ。
「お久しぶりです。また乗せてもらえますか?」
「もちろんだ! 今度は無料でいい。あの時の礼がまだできてないからな」
再び、蒼の風号で帰路についた。
航海中、船員たちに懐かしそうに迎えられた。
「また来てくれたんですね! お菓子、また食べたかったんですよ!」
「もちろん、作りますよ」
毎日、船員たちのためにお菓子を作りながら、帰り道を過ごした。
北の大陸が近づくにつれ、不思議な懐かしさを感じた。
「帰ってきた」
港に降り立つ。
見慣れた街並み、聞こえてくる言葉、漂ってくる食べ物の香り。
「おかえり、ココ」
誰かが声をかける。
振り向くと、そこに王女が立っていた。
「殿下! どうしてここに?」
「あなたが戻ってくると聞いて、出迎えに来たわ」
「わざわざ……」
「当然よ。王国の恩人が帰ってくるんだもの。それに……」
王女が少し照れたように笑う。
「あなたのお菓子が食べたくなってたの。どこに行っても、ここのお菓子が一番なのよ」
「嬉しい」
「それより、土産話を聞かせて。いっぱい、冒険したでしょう?」
「ええ、たくさん」
王都への道を歩きながら、旅の話をした。
砂漠の王国のこと、古代遺跡の発見のこと、タリクとの共同作業のこと。
「古代のレシピ……」
王女が興味深そうに聞いている。
「その菓子、私にも作ってもらえる?」
「もちろんです」
「楽しみにしてる」
王都に着くと、もふもふカフェの前にまた人だかりができていた。
「師匠が帰ってきた!」
リリアの声。
「ただいま」
「おかえりなさい!」
飛びついてくるリリアを受け止める。
少し重くなった気がする。
「大きくなったんじゃない?」
「師匠、私、大人ですから!」
「そうだったわ」
グレンとノエルも出てきた。
「師匠、土産は?」
「グレン、それが最初の言葉?」
「だって、気になりますし」
「砂漠のスパイスをたくさん持ってきました。新しいレシピに使えると思って」
「やった!」
「ノエルには、古代の記録の写しを持ってきました。研究の参考になれば」
「ありがとうございます!」
みんなが揃って、笑顔で迎えてくれる。
その夜、店を閉めた後、四人で厨房に集まった。
「師匠、南の大陸はどんなところでしたか?」
リリアが目を輝かせる。
「熱くて、乾燥していて、でも人の情が厚かった。砂漠の民は、過酷な環境を生き抜いてきただけあって、絆が強い。菓子も、そういう文化を反映している」
「どんな菓子ですか?」
「タリクという職人から教わった、力を与えるナッツ菓子。それと、古代遺跡で見つけた七色に輝く菓子」
「七色に輝く菓子……!」
「作ってみましょうか。材料は持ち帰ってきたから」
その夜、私は南の大陸の菓子を三人に作ってみせた。
「砂漠の夜明け」を食べたリリアは、しばらく黙っていた。
「なんだろう、これ。力が湧くのに、心が穏やかになる。不思議な感じがする」
「南の大陸の魔法と、私の魔法を合わせたんです」
「師匠は、旅をするたびに変わっていきますね」
「変わっている?」
「はい。最初は、美味しいものを作りたいという気持ちだけだったと思う。でも今は、もっと大きなものが見える。世界全体のことが」
グレンが頷く。
「俺も感じます。師匠のお菓子が、どんどん深くなってる」
ノエルも言う。
「魔法の安定性も、はるかに上がりました。最近は、師匠のお菓子から乱れた波動を感じることがない」
「そう言ってもらえると、嬉しい」
これが、私の居場所だった。