白ねこのココと、あまい森のひみつ

サクラノクニを後にして、旅を続けること数週間。
大陸の内部へ進むと、見知らぬ砂漠の町に辿り着いた。
その町は、ちょうどお祭りの最中だった。
「何かお祭りをやってるな」
レイが周囲を見回す。
色とりどりの旗、賑やかな音楽、人々の笑い声。
中央広場には巨大な舞台が設けられ、その周囲を屋台が取り囲んでいた。串焼き肉の香り、スパイスの香り、砂漠特有の乾いた熱気。どこかで楽器が演奏されていて、その音楽が祭りの高揚感をさらに高めていた。
「何のお祭りですか?」
通りかかった人に尋ねると、にっこり笑って答えてくれた。
「年に一度の『最かわコンテスト』ですよ!」
「最かわコンテスト?」
「この大陸中から、多くの参加者が集まって、様々な競技で腕を競うんです。優勝者は、大陸の守護英雄と呼ばれる称号を得られる!」
 説明してくれたのは、きらきらした目をした少女だった。年は十二、三歳だろうか、色鮮やかな民族衣装を着て、頭にはお揃いの花飾りをつけている。
「どんな競技があるんですか?」
「全部で五つあるんです!」
 少女は指を折りながら教えてくれた。
「一つ目は戦闘部門——参加者が一対一で戦う、一番人気の競技。二つ目は知恵比べ部門——謎解きや交渉術を競います。三つ目が、特技部門——どんな特技でもいいんです、絵でも歌でも踊りでも。四つ目が……」
「お菓子部門!?」
 思わず私が叫んだ。
「そう! 今年から新設された部門なんです。この地域の食材を使って、一番美味しいお菓子を作った人が優勝で。それと、五つ目が——笑顔部門! 参加者の笑顔を一般市民が投票する部門です」
「面白そうですね」
「参加してみたら、どうですか? 今ならまだ受付中ですよ!」
 レイが面白そうに私を見る。
「ココ、お前、出てみたら?」
「え、私が?」

「ケットシーで、お菓子魔法使いで、
 世界中を旅して人々を救ってきた。
 立派な主役じゃないか」

「そんな大げさな……」

でも、少し胸が躍った。

コンテストの案内板を読む。
王女主催の「最かわコンテスト」。
それは、かわいさを競うというより、
人を思いやる心を称えるお祭りだった。

「出てみよう」

私は思い切って、受付へ向かった。

 受付のテントには長い列ができていた。前に並ぶ参加者たちを観察する。竜人族、木の精のようなエルフ、体が半透明の水の精霊。みんな自信に満ちた表情で、それぞれ特徴的な外見を持っている。
 私は小さな白いケットシー。
 少し萎縮しかけたが、後ろからレイが背中を軽く叩いた。
「行ってこい」
「……はい」
受付で名前を書くと、係員が驚いた顔をした。
「ココ? もしかして、王国の王女を呪いから救ったという?」
「あ、はい……」
「有名人じゃないですか! ぜひ、頑張ってください!」
名前が知られているとは思っていなかった。噂は案外、遠くまで届くものらしい。
ゼッケンは十三番。真っ白な布に赤い番号が書かれていて、胸に留める。
「ケットシーの番号ね。かわいい」
 後ろで誰かが呟くのが聞こえた。振り向くと、水色の髪をしたエルフの少女が照れくさそうに笑っていた。
 コンテスト会場は、砂漠の真ん中に広がる巨大な広場だった。
 参加者を見回すと、多種多様な者たちが集まっていた。
 エルフの戦士、獣人の魔法使い、人間の剣士、ドワーフの職人。それぞれが自信満々の表情だ。
 特に視線を引いたのは——白銀のドレスに身を包んだ、一人のエルフだった。
 プラチナブロンドの長い髪が風に揺れ、切れ長の瞳には強い意志の光がある。腰には細身の剣を帯び、その立ち姿には生まれながらの威厳があった。
「誰ですか、あの人」
「エルフ王国のフィアナ王女だ」
周囲の人が口々に説明してくれた。
「三年連続最かわの称号を持つ伝説の人。剣の腕は大陸でも有数、知性も群を抜いていて、魔法も使える。今年も彼女の優勝は間違いないと言われてる」
「すごい……」
 正直、羨ましくなった。
 私は戦闘能力は高くない。お菓子魔法はあるが、直接戦う力は弱い。
「でも、私には私のやり方がある」
 フィアナ王女が視線をこちらに向けた。
 目が合う。
 彼女は一瞬、私を見て、僅かに首を傾けた。それから——
「白いケットシーね。珍しい」
 声は凛と澄んでいた。
「はい。ココと申します」
「フィアナ。この大会は三年目よ。あなたは初参加かしら」
「そうです」
「初参加で勝つのは難しいわ。でも、頑張って」
それだけ言って、彼女は歩み去った。
「……圧倒的だったな」
 追いついてきたレイが呟く。
「強いです。でも」
「でも?」
「私も、負けたくない」
 レイが笑った。
「そうこなくちゃ」
 第一競技は、戦闘部門。
 私には縁がないが、観戦は楽しかった。
 フィアナ王女の戦いは、芸術だった。
 細身の剣を手に、まるで踊るように動く。相手の攻撃を紙一重でかわし、的確に反撃する。魔法を組み合わせた連携攻撃は、見ているだけで息を飲む美しさだった。
「すごい……」
「まるで踊ってるみたいだな」
 レイも感心している。
 戦闘部門の観客席で、周囲の人々は皆フィアナ王女への賞賛を口にしていた。確かに、彼女は圧倒的だった。勝敗が決まるたびに、涼しい顔で頭を下げる姿も品があった。
 戦闘部門は、私はギリギリのラインで勝ち上がった。
 一回戦の相手はドワーフの剣士だったが、爆裂クッキーと眠りのクッキーを駆使してなんとか勝利した。
「なんて戦い方だ……」
 相手の剣士が唖然としている。
「お菓子を使ったんですよ」
「お菓子で戦うやつを、初めて見た」
 二回戦は人間の魔法使いで、こちらは相手の魔法の隙をついて迷彩クッキーで視界を奪い、勝利した。
 しかし三回戦で、フィアナ王女に当たった。
「あなたが相手ね」
「はい」
 フィアナは剣を構えながら、私をまっすぐ見た。
「お菓子魔法を使うと聞いた。どんなものか、見せてもらおうか」
「全力でいきます」
 爆裂クッキー、眠りクッキー、迷彩クッキー、魔力増幅クッキー——持てる限りの手を尽くした。
 しかしフィアナは強かった。
 迷彩クッキーの煙を風魔法で吹き飛ばし、爆裂クッキーは剣で弾いた。眠りクッキーの粉が届く前に、攻撃魔法で無力化してきた。
「面白い戦い方ね。でも——」
 
 三分後、私は地面に膝をついていた。
「まいりました」
「惜しかったわ。あなたの戦い方、見ていて楽しかった」
 観客席から大きな拍手が起きた。
「お菓子で戦うなんて、初めて見た!」
「かわいいし、戦略的!」
 負けたのに、笑顔で拍手してくれる観客たちが嬉しかった。
 知恵比べ部門は、謎解き、戦略ゲーム、交渉術の三種目からなっていた。
 謎解きは、漫画家時代に磨いた論理的思考力が役に立った。複雑な暗号を解読し、仕掛けのある部屋を突破する。
「この記号は方角を表していて、次の記号は数字……つまり、宝箱は北に三歩、東に七歩の地点に」
「正解!」
 審査員が驚いた顔をする。
「なんで分かったんですか?」
「以前、謎解きを題材にした漫画を描いたことがあって。その資料調査の時に、暗号の基本的な法則をいくつか覚えてたんです」
 まさか前世の漫画家知識がこんな形で役に立つとは。
 交渉術の課題は「商人役と交渉し、より良い条件を引き出せ」というものだった。
 相手の商人役の人物を観察する。目が笑っていない。価格を下げることに本当は抵抗がある。でも、形として見栄えの良い取引をしたい。
「交渉はやめにしましょう」
 私が言うと、相手が驚いた顔をした。
「え?」
「代わりに、提案があります。お菓子を差し上げます。その代わりに、この取引で私の側に有利な条件を一つ、入れていただけますか」
「……お菓子?」
「はい。さっき厨房で少し作ってきました。よかったら」
 クッキーを差し出す。
 商人役の人が一口食べて——顔がほころんだ。
「わかりました。一つだけなら」
「ありがとうございます。では、引き渡し期日についてですが——」
 交渉は、あっという間に終わった。
「ルール上は問題ないですが……お菓子を持ち込んで商人の気持ちを和らげるとは」
 審査員が苦笑した。
「でも、確かに有効な交渉手段ですね」
 知恵比べ部門、私はそこそこの結果を残した。
「なかなかやるじゃないか、ケットシーの子」
 審査員の一人が認めてくれる。
 特技部門では、私は絵を描いた。
 これが自分の特技だと気づくのに少し時間がかかったが、漫画家だった前世は伊達じゃない。
「今から五分間で、この町の風景を描いてください」
 と言われ、素直に描いた。
 砂漠の町の遠景、中央の舞台、人々が行き交う市場、空に舞う砂の粒まで細かく描き込んだ動的な絵。
 審査員が絵を見て無言になった。

 しばらくして——
「……これは本物の才能ですね」
「ありがとうございます」
 観客席から展示されると、見物に来た人々がざわめいた。
「こんな絵、見たことない」
「まるで現場にいるみたいだ」
「ケットシーって、こんな才能があるの?」
 私の特技が「絵を描くこと」だとわかった時、フィアナ王女が隣に来た。
「あなた、絵も描けるの?」
「前世で漫画家だったんです」
「漫画家? それは何?」
「絵を使って物語を語る職人みたいなものです」
「興味深いわね」
 彼女は少し間を置いて言った。
「私に一枚、描いてもらえる? あとで」
「もちろんです」
 この競技でも、私は高得点を得た。
 そして、第四競技、お菓子部門が始まった。
「これが本番よ」
 お題は「この土地を表すお菓子を作れ」。
 制限時間は二時間。
 調理台の前に立ち、提供された材料を見渡す。砂漠の蜂蜜、ナッツ類、独特の香辛料、小麦粉、獣脂。それから、主催者が特別に用意した、砂漠特有の甘酸っぱい果実。
 砂漠の砂と太陽、オアシスの水と緑、この大陸の文化と歴史。
 私は考えた。
 目を閉じて、この町に来てからの記憶を辿る。
 砂金色の市場。色鮮やかな衣装。老人が誇らしげに語った「甘味の文化では世界一」という言葉。二人で食べたバクラヴァ風の菓子の、濃厚な甘さ。夕暮れに染まった砂漠の岩肌。
 それから——砂漠の夜空。
 昨夜、宿の屋上から見た星空。砂漠の夜は、驚くほど星が多かった。都市の光害がなく、澄み切った空気に、天の川まで見えた。レイと二人で、あんなに綺麗な星空を見上げながら、旅の話をした。
「砂漠の夜を作ろう」
 決まった。
 サンドケーキ——砂漠をイメージした、金色のサブレ生地。中にはオアシスをイメージした、みずみずしい果物のジュレを閉じ込める。表面には砂に見立てたキャラメルクランブルを散らし、その上に夜空の星を表現したシュガーガラス細工を立てる。
 そして、お菓子魔法で——食べた瞬間に砂漠の夜風を感じるような、清涼感と温もりが混じる香りを付与する。
 手を動かしながら、心の中で祈る。
 この土地の人々が、砂漠の厳しさの中でも美しいものを見つけ続けてきたこと。蜂蜜の甘さを大切に守ってきたこと。そういうすべてを、この一皿に込めたい。
「……ココ、大丈夫か」
 観客席からレイの声が聞こえた。
「集中してます!」
「耳が倒れてたから、心配で」
「集中すると倒れるんです! 放っておいてください!」
 観客席から笑い声が上がった。
 残り十分。シュガーガラスを丁寧に立て、キャラメルクランブルを薄く均等に散らす。最後に、お菓子魔法を込める。
「この菓子を食べる人の心に、砂漠の夜の美しさが届きますように」
 静かに、丁寧に、心の底から願いながら魔法を込めると——サンドケーキがほのかに輝いた。
 砂金色のケーキが、まるで夜空に浮かぶ砂丘のように美しく仕上がった。
「完成」
 審査員が試食する。
 一口目で、全員の表情が変わった。
「砂漠の風が……体の中を吹き抜けていく……」
「オアシスの清涼感まで感じる」
「これは……ただのお菓子じゃない」
 審査員の一人が目を閉じ、静かに何かを感じ取っている様子だった。
「懐かしい……この感覚は……」
 しばらくして、彼は目を開けた。
「子どもの頃、砂漠の外れで見た夜明けに似た感覚だ。星が消え、空が徐々に赤く染まっていく、あの瞬間の——美しさと、寂しさと、また一日が始まるという期待が混ざり合った、あの感じ」
「それを、感じてもらえたんですね」
「ええ。あなたのお菓子は、ただ美味しいだけじゃない。その土地の魂を食べさせてくれる」
審査が終わり、結果発表の時間になった。
「お菓子部門の優勝は……ケットシーのココ!」
 歓声が上がる。
「やった……!」
 耳がまっすぐ立ち、尻尾が大きく揺れた。観客席からも笑いと拍手が起きた。
「可愛い! 尻尾が喜んでる!」
「あの耳見て! ピーンってなってる!」
 恥ずかしいけど、止められない。
 最後の競技、笑顔部門は、一般市民の投票で決まるというものだった。
 舞台に参加者全員が並んで、それぞれ「一番いい笑顔」を見せる。観客がその場で投票する、という仕組みだ。
「笑顔……か」
 舞台の上で順番を待ちながら、私は考えた。
 作り笑顔は嫌だ。
 でも、どんな笑顔が「一番いい」のだろう?
 前の人から順番に笑顔を披露していく。フィアナ王女は凛と美しい微笑みを見せ、会場から歓声が上がった。確かに美しい。絵になるような完璧な笑顔だ。
 私の番になった。
 観客席を見る。たくさんの顔。子どももいる。老人もいる。町の人たちが、遠くから旅してきた人たちが——みんなこちらを見ている。
 その中に、レイの顔がある。
 少し心配そうに、でも応援するように、こちらを見ていた。
 私は彼に向かって——ただ、自然に笑いかけた。
「ありがとう」という気持ちで。ここまで一緒に旅してきてくれた感謝を込めて。
 その瞬間——会場がしんと静まった。
 次の瞬間、大きな拍手が起きた。
「あの笑顔! 今日一番だ!」
「なんでこんなに温かい気持ちになるんだ!」
「お菓子みたいな笑顔だ!」
 審査員がこそこそ話し合い、笑顔部門の結果が出た。
「笑顔部門の最高得点は——ケットシーのココ!」
 信じられなかった。
 フィアナ王女の美しい笑顔を差し置いて、私が?
「驚いた」
 フィアナが隣に来た。
「あなたの笑顔、反則ね。見た人がみんな、笑顔になるじゃないの」
「そんな……」
「あれは技術じゃなく、心から来る笑顔。その人が本当に幸せな時にしか出ない表情だわ」
彼女は少し柔らかく微笑んだ。
「あなたが旅していて、本当に幸せなのが伝わってくる。そういう人の笑顔は、見ていてうつるのよ」
 総合成績でも、私は上位に食い込んでいた。
 戦闘部門は三位止まりだったが、知恵比べで二位、特技部門で一位、お菓子部門で一位、笑顔部門で一位。
 総合二位。
 最終的な「最かわコンテスト」の優勝者は、あの炎の剣を使うエルフの王女フィアナだった。
「おめでとうございます」
 素直に祝福する。
 フィアナは少し驚いた顔をした。
「あなたが、私に一番近い点数だったのよ。悔しくないの?」
「もちろん悔しいです。でも、あなたが強かった。それだけです」
「今日の戦い方、面白かったわ。お菓子で戦う、なんて誰も考えない」
「お菓子は攻撃にも防御にも使えますから」
「でも、一番印象的だったのは——笑顔部門のあの瞬間ね」
フィアナはしばらく私を見つめた後、微笑んだ。
「正直なのね。私、あなたのこと、嫌いじゃないわ」
「光栄です」
「ココ、でしたか。もし機会があれば、私の国にも来てください。あなたのお菓子を、我が民に食べさせてあげてほしい」
「喜んで」
 コンテストを通じて、また新たな繋がりができた。
 表彰式の後、レイが走り寄ってきた。
「よくやった! お菓子部門、笑顔部門、ダブル優勝だぞ!」
「総合は二位でしたけど」
「十分だ。しかも、笑顔部門一位って何だよ、お前らしくてずるいぞ」
「ずるくはないです」
「可愛すぎてずるいって言ってる。あの笑顔を舞台上でやられたら、観客全員落ちるに決まってる。俺も落ちたし」
「え」
「落ちた、というのは比喩だからな」
「……どういう意味ですか」
「笑顔に、だよ。綺麗だった。今日一番だった」
レイが私の顔を真っ直ぐ見る。
「なあ、ココ。一つ聞いていいか」
「何ですか」
「オレが好きか」
 砂漠の乾いた風が、二人の間を通り抜けた。
 お祭りの喧騒は遠ざかり、その瞬間だけ、不思議と静かな時間が流れた。
「……はい」
「そうか」
レイがゆっくりと微笑んだ。
「なら、これからもずっと一緒にいよう。世界中を旅しながら、お菓子を広めながら」
「はい」
 彼は、私の手を取った。
 砂漠の夕日が、二人を金色に染めた。周りで、コンテストの余韻が続いている。人々の笑い声、音楽、甘い香り。
「いい景色だな」
「ええ」
「これからも、こういう景色を一緒に見よう」
「もちろんです」
 私は、心の中で呟いた。
 転生してケットシーになって、お菓子作りを始めて、様々な国を旅して、様々な人と出会った。
 全部が全部、繋がっていたんだ。
 耳と尻尾が、ひっそりと幸せそうに揺れていた。
 コンテストが終わった翌日、私はフィアナと再び会った。
「ココ、昨日の菓子、まだ口の中に残っている気がするわ」
「それは、砂漠の風を含む魔法です。しばらく残ることがあります」
「嫌じゃないわ。むしろ、ずっとこのままでいたいくらい」
彼女は少し照れたように笑った。
普段の凛とした表情とは違う、人間らしい笑顔だった。
「ねえ、一つ聞いていいかしら。あなたって、なんで菓子職人になったの? 魔法使いとしての力があるのに、菓子作りを選んだ理由が知りたくて」
私は少し考えた。
「転生した時、まずお腹が空いたんです。そして、森でクッキーの木を見つけた。その時、美味しいものを食べて人が笑顔になる瞬間が、一番好きだと気がついた」
「美味しいものを食べて笑顔になる瞬間……」
「魔法で人を守ることも素晴らしい。でも、私には私のやり方がある。菓子で人の心を温めることが、私の戦い方なんだと思います」
フィアナはしばらく黙った後、言った。
「あなたを見ていると、強さの形は一つじゃないと感じる。私はずっと剣で強くあることにこだわってきたけど、あなたの菓子も確かに世界を変えている」
「フィアナさんの剣も、きっと世界を守っています。どちらも必要なんです」
「そうね。ありがとう、ココ。いい話ができた」
彼女は立ち上がり、空を見上げた。
「いつか、あなたが私の国に来てくれたら……その時は、精一杯おもてなしするわ。菓子で人を幸せにするあなたが、私の民を幸せにしてくれるところを見てみたい」
「必ず行きます」
「約束よ」
大陸を超えて、新しい友が増えた。
これが私の道。