第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

いよいよ、この日が来てしまった。

王妃教育――しかも、1ヶ月。
王国に閉じ込められるようなものだ。

……しんどすぎる。

いやだ。逃げたい。行きたくない。
胸の奥がぎゅっと重くなる。

分かっている。逃げられないことくらい。
それでも――

「うー……」

小さく、情けない声がこぼれた。

「お嬢様、うなだれていても仕方ありませんよ。さっさと腹を決めてください」

ユウリが、容赦なく言い放つ。

「つ、冷たい……」

「私だって、寂しいですよ?」

その言葉に、思わず顔を上げる。

「……ほんと?」

「はい。おかげで、少し休暇を取らせていただきます」

「全然寂しくないじゃん! ……まあ、リフレッシュしてきて」

「ありがたいお言葉です」

ユウリは、きちんと頭を下げた。
その姿が妙に清々しくて、余計に胸が痛い。

「それにしたって……」

私は、もう一人の顔を見る。

「アリスも、来てくれないの?」

「仕方ありません。決まりですから」

淡々とした声。
その無表情さに、肩ががっくり落ちる。

「……あーいやだー……」

アリスは少しだけ目を細めた。
慰めるでもなく、突き放すでもなく、ただ“見守る”ようなまなざし。

その視線が、逆に胸にしみた。