「……何も、ないな」
「本当ですね」
「なんだ。拍子抜けだな」
「そうですか? 私は――楽しかったですよ」
そう言うと、ディランは一瞬きょとんと目を瞬かせ、それからふっと表情をゆるめた。
その微笑みは、胸の奥をそっと撫でられたようにあたたかい。
その顔を見た瞬間、私は気づく。
――この仕掛けを作ったのは、きっと…。
ディランには兄がいる。
王位継承権を持たず、けれど幼い弟を「可哀想だ」と言った人。
その言葉を向けられたとき、ディランは
「嫌われているのだと思った」
と、静かに語っていた。
けれど今、空になった箱を見つめる彼の眼差しは、悲しみではない。
失われた日々をそっと抱きしめるような、優しいエメラルドの輝きだった。
書斎に流れる静寂は、どこかあたたかい。
私はあえて何も聞かなかった。
ただ、隣にいる彼の気持ちが、少しでも軽くなればいいと思った。
「本当ですね」
「なんだ。拍子抜けだな」
「そうですか? 私は――楽しかったですよ」
そう言うと、ディランは一瞬きょとんと目を瞬かせ、それからふっと表情をゆるめた。
その微笑みは、胸の奥をそっと撫でられたようにあたたかい。
その顔を見た瞬間、私は気づく。
――この仕掛けを作ったのは、きっと…。
ディランには兄がいる。
王位継承権を持たず、けれど幼い弟を「可哀想だ」と言った人。
その言葉を向けられたとき、ディランは
「嫌われているのだと思った」
と、静かに語っていた。
けれど今、空になった箱を見つめる彼の眼差しは、悲しみではない。
失われた日々をそっと抱きしめるような、優しいエメラルドの輝きだった。
書斎に流れる静寂は、どこかあたたかい。
私はあえて何も聞かなかった。
ただ、隣にいる彼の気持ちが、少しでも軽くなればいいと思った。



