第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

ディランが手を差し出し、私はその手を取る。
花畑を抜けると、木々の隙間から光がきらきらと揺れ、川のせせらぎが聞こえてきた。

水面は鏡のように澄んでいて、
木々の影、花の影、そして私たちの影までもが揺れて映っている。

「綺麗……」

「影は“流れ”に乗る。つまり――」

ディランはしゃがみ込み、川辺に落ちていた大きめの葉を拾った。
器用に折り曲げ、あっという間に小さな“葉っぱの船”を作り上げる。

「え……すごい」

「子供の頃、よく遊んだんだ」

ディランは水面にそっと葉っぱの船を浮かべた。
船は影を揺らしながら、ゆっくりと流れに乗って進んでいく。

「影を追う、ってこういうことですか?」

「そういうことだ」

ふたりで並んで歩きながら、
水面に映る葉っぱの影を追いかける。

やがて――
葉っぱの船が、川辺の岩にふわりとぶつかって止まった。

その岩の陰に、何かが見える。

「……瓶?」

透明なガラス瓶が、紐で岩に括りつけられていた。
まるで、葉っぱの船がそこへ導いたかのように。

ディランが瓶を取り上げ、蓋を開ける。
中には、一枚の紙。

ふたりで覗き込む。

『隠されし甘い罠』

「……どういうことでしょう?」

「そうだな―」

ディランが顔を上げ、微笑む。
嫌な予感…。