「とりあえず、身体動かす!」
勢いよく宣言してから、私は庭の端を見渡した。
芝をさわりと風が揺らす。
――よし、見つけた。
茶色の髪をくしゃりと乱し、どこかへこたれた雰囲気をまとった青年。
私の兄、マルクだ。
かつては遊び歩くことしか考えていなかった兄が、最近は少しずつ変わり始めている。
自分の足で前を向くと決めたらしい。
その背中が、以前よりずっと大きく見えた。
「お兄様」
声をかけると、兄は気だるげに振り返る。
「なんだ、妹」
「私がお相手しましょう」
「……いやだ」
「“いや”とかありません。やりますよ」
「……はああ……。分かったよ」
観念したように、兄は重い腰を上げた。
木剣を手に取る仕草はぎこちないが、どこか覚悟がにじむ。
向かい合い、軽く剣を交える。
木と木がぶつかる乾いた音が、庭に小気味よく響いた。
「お兄様、腰が引けてますよ」
「わ、分かってる!」
「もっと下半身に力を入れて」
「入れてるって!」
「脇、甘いです」
「うげっ」
兄はヒィヒィ言いながらも、必死に食らいついてくる。
額に汗が滲み、呼吸が荒くなっても、目だけは逃げていない。
「なあ、なんか機嫌悪くないか!? 八つ当たりしてないか!」
「してませんよ」
決して――
王妃教育が憂鬱で、八つ当たりしているわけではない。
……たぶん。
そんな時だった。
「マルク様、ファイトです!」
澄んだ声が庭に響く。
ナナだ。
淡い桃色のドレスを揺らしながら、両手を胸の前でぎゅっと握りしめている。
兄を大切に思ってくれている令嬢で、湖に落ちた彼女を助けたのが縁で、いつの間にか私とも親しくなった。
続いて――
「ティアナ様、素敵です!!」
ユリアの声が飛ぶ。
彼女は目を輝かせながら私たちを見守っていた。
この2人は、10年前にいざこざがあった。
けれど、私が間に入り今では3人でお茶会を開くほどの仲になった。
勢いよく宣言してから、私は庭の端を見渡した。
芝をさわりと風が揺らす。
――よし、見つけた。
茶色の髪をくしゃりと乱し、どこかへこたれた雰囲気をまとった青年。
私の兄、マルクだ。
かつては遊び歩くことしか考えていなかった兄が、最近は少しずつ変わり始めている。
自分の足で前を向くと決めたらしい。
その背中が、以前よりずっと大きく見えた。
「お兄様」
声をかけると、兄は気だるげに振り返る。
「なんだ、妹」
「私がお相手しましょう」
「……いやだ」
「“いや”とかありません。やりますよ」
「……はああ……。分かったよ」
観念したように、兄は重い腰を上げた。
木剣を手に取る仕草はぎこちないが、どこか覚悟がにじむ。
向かい合い、軽く剣を交える。
木と木がぶつかる乾いた音が、庭に小気味よく響いた。
「お兄様、腰が引けてますよ」
「わ、分かってる!」
「もっと下半身に力を入れて」
「入れてるって!」
「脇、甘いです」
「うげっ」
兄はヒィヒィ言いながらも、必死に食らいついてくる。
額に汗が滲み、呼吸が荒くなっても、目だけは逃げていない。
「なあ、なんか機嫌悪くないか!? 八つ当たりしてないか!」
「してませんよ」
決して――
王妃教育が憂鬱で、八つ当たりしているわけではない。
……たぶん。
そんな時だった。
「マルク様、ファイトです!」
澄んだ声が庭に響く。
ナナだ。
淡い桃色のドレスを揺らしながら、両手を胸の前でぎゅっと握りしめている。
兄を大切に思ってくれている令嬢で、湖に落ちた彼女を助けたのが縁で、いつの間にか私とも親しくなった。
続いて――
「ティアナ様、素敵です!!」
ユリアの声が飛ぶ。
彼女は目を輝かせながら私たちを見守っていた。
この2人は、10年前にいざこざがあった。
けれど、私が間に入り今では3人でお茶会を開くほどの仲になった。



