第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「……ディランは?」

問いかけると、ディランはフォークを置き、少しだけ視線を逸らした。

「俺か」

陽の光を受けた横顔が、どこか考え込むように静かだ。

「あまり、考えたことがなかったな」

「そうなんですか?」

「ただ……食べにくいものは、少し面倒だ」

「なんですか、それ」

思わず笑って突っ込むと、ディランは肩をすくめて苦笑した。

「仕方ないだろう。テーブルマナーが、やたらと厳しかったからね」

その言葉には、軽さの奥にほんの少しだけ疲れが滲む。

「自由に食べる、というより、“間違えずに食べる”ことを覚えさせられた」

「……大変そう」

やっぱり王族。
礼儀やマナーは、きっと想像以上に厳しかったのだろう。

「まあ、今となっては慣れたものだ」

はは、と軽く笑うその声は、どこか吹っ切れたようで、でも少しだけ寂しげでもあった。