第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

ディランが迎えに来た瞬間、朝の空気がふわりと変わった。

「やあ。おはよう」

朝日を背に立つ彼は、相変わらず眩しいほど整っていて、思わず目を細めてしまう。

「おはようございます」

自分でも驚くほど、声が少し柔らかくなっていた。

ディランは微笑み、手を差し出す。

「それでは――お姫様、お手をどうぞ」

その言い方があまりにも自然で、胸がくすぐったくなる。
そっと手を重ねると、指先が優しく絡め取られた。

「今日は、誰にも邪魔されず、穏やかなデートにしようと思ってね」

「……意気込みですか?」

「ああ。本気だ」

真っ直ぐな瞳で言われて、思わず笑ってしまう。

馬車に乗り込むと、ディランは隣に座りながら、少しだけ距離を詰めてきた。

「……どちらへ?」

「俺の別荘へ行こう。街に出て人に会うのは、今日は避けたい」

そして、少し低い声で囁く。

「ティアナを独占する」

(独占、って……)

その言葉が、胸の奥に甘く落ちていく。