ディランの指先が、ためらいもなく私の手を包む。
その温度に、心臓が一瞬だけ跳ねた。
「……そろそろ、抜け出そうか」
低く落ちた声が、耳の奥に甘く残る。
「え……う、うん」
手を引かれるまま歩くと、連れて行かれた先は夜のガーデンだった。
月明かりに照らされた花々が、静かに揺れている。
「さすがに、夜は冷えるな」
そう言って、ディランが自分の上着をそっと肩にかけてくれる。
ふわりと彼の体温が移ってきて、思わず息が止まる。
「ありがとう」
「……それと」
少しだけ間を置いて、ディランが小さな包みを差し出した。
「これを」
開けてみると――
「……香水?」
「俺の好きな香りだ。君にも、お裾分け」
瓶を受け取ると、ほのかに柑橘系のやさしい香りが漂う。
それはどこか、彼の雰囲気に似ていた。
「ありがとうございます」
「もし……寂しくなったら、これをつけて」
いたずらっぽく微笑むその顔が、月明かりに照らされてやけに綺麗だ。
「俺のことを思い出してくれ」
「……なんですか、それ」
言い返しながらも、こんなふうに言われて、平気でいられるわけがない。
ディランは少しだけ視線を落とし、静かに息をついた。
「さて。もう遅い。君ともう少しいたいが……そうもいかないな」
エメラルドの瞳が夜に溶け、ルビーのように深く光る。
その目に映る自分が、少しだけ特別に見えた。
「部屋まで送ろう」
すっと手を取られ、自然に指が絡む。
「はい」
静かな廊下を、手を繋いだまま並んで歩く。
足音だけが響いて、ふたりの世界がそこにあった。
部屋の前で足を止めると、ほんの一瞬、名残惜しさが漂う。
「…今日はありがとうございました」
「ああ。おやすみ。次は――デートで会おう」
囁くような声。
互いに確認するように、約束した日程を確かめてから別れる。
扉が閉まったあとも、
肩にかけられた上着のぬくもりと、香水の香りだけがそっと残っていた。
――忘れられない誕生日だった。
その温度に、心臓が一瞬だけ跳ねた。
「……そろそろ、抜け出そうか」
低く落ちた声が、耳の奥に甘く残る。
「え……う、うん」
手を引かれるまま歩くと、連れて行かれた先は夜のガーデンだった。
月明かりに照らされた花々が、静かに揺れている。
「さすがに、夜は冷えるな」
そう言って、ディランが自分の上着をそっと肩にかけてくれる。
ふわりと彼の体温が移ってきて、思わず息が止まる。
「ありがとう」
「……それと」
少しだけ間を置いて、ディランが小さな包みを差し出した。
「これを」
開けてみると――
「……香水?」
「俺の好きな香りだ。君にも、お裾分け」
瓶を受け取ると、ほのかに柑橘系のやさしい香りが漂う。
それはどこか、彼の雰囲気に似ていた。
「ありがとうございます」
「もし……寂しくなったら、これをつけて」
いたずらっぽく微笑むその顔が、月明かりに照らされてやけに綺麗だ。
「俺のことを思い出してくれ」
「……なんですか、それ」
言い返しながらも、こんなふうに言われて、平気でいられるわけがない。
ディランは少しだけ視線を落とし、静かに息をついた。
「さて。もう遅い。君ともう少しいたいが……そうもいかないな」
エメラルドの瞳が夜に溶け、ルビーのように深く光る。
その目に映る自分が、少しだけ特別に見えた。
「部屋まで送ろう」
すっと手を取られ、自然に指が絡む。
「はい」
静かな廊下を、手を繋いだまま並んで歩く。
足音だけが響いて、ふたりの世界がそこにあった。
部屋の前で足を止めると、ほんの一瞬、名残惜しさが漂う。
「…今日はありがとうございました」
「ああ。おやすみ。次は――デートで会おう」
囁くような声。
互いに確認するように、約束した日程を確かめてから別れる。
扉が閉まったあとも、
肩にかけられた上着のぬくもりと、香水の香りだけがそっと残っていた。
――忘れられない誕生日だった。



