第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

騎士団の門をくぐった瞬間、銀髪が光を弾いた。
水色の瞳は人混みの中でもひときわ目立つ。

「セナ」

「お嬢様、おはようございます。
 先ほど、オーウェン団長が慌てているのを見かけましたが……また、殿下ですか?」

「……そう」

「やはり」

セナは小さく苦笑した。
“またか”という諦めと、“大丈夫ですか”という気遣いが混ざった表情だ。

「とんでもないもの、よこされたの」

「何ですか?」

「王妃教育の招待状」

「……それはまた……」

一拍置いて、真顔で告げる。

「ご愁傷様です」

「そこは、もう少し別の言い方あるよね!?」

思わず突っ込んでしまった。

その時――

「あ、お嬢さまー! おはよう!」

背後から勢いよく抱きつかれた。
黒髪に紅い瞳。

「おはよう、テオ」

「またお前は……」

セナが心底呆れたようにため息をつく。

「ねえ、何の話?」

私の肩に顎を乗せるようにして、テオが顔を近づけてくる。
くすぐったい。

「王妃教育」

「なに、それ」

「王妃としての礼儀作法とか、振る舞いとか……」

「違う違う」

テオはぶんぶんと首を振った。

「なんで、婚約破棄じゃないの!?」

「……国民の不安を煽るから、そんな簡単にできないみたい」

「それで、王妃教育?」

テオは一瞬だけ黙り、そして真顔になった。

「あの粘着質王子、逃がす気、まったくないじゃん」

「テオ。言い方」

……粘着質って。
否定しきれない自分が悔しい。