第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「そして、これは俺たち第3騎士団のみんなから!」

ロベルトが胸を張って差し出してきたのは、リボンのついた小さな箱だった。
周囲の騎士たちも、なぜかそわそわしている。

箱を開けると、そこには――

「……ナイフ?」

銀色の刃が光を反射して、きらりと輝く。
手に収まるサイズで、無駄のない造りだ。

「これ、すごい切れ味抜群なんですよ!」

「ちゃんと折りたためるので便利です!」

「オーダーメイドなので、ここにティアナ様の名前入れました!」

誇らしげに説明する声が重なる。

その横で、ルイがぽつりとつぶやいた。

「……お嬢様にナイフを渡すってどうなの?」

「確かに」
アリスも腕を組んでうなずく。

「えっ!? だ、だめでした……?」

「絶対いいと思ったんだけどな!」

「わざわざオーダーメイドしてもらったのに!」

一斉にわらわらと焦り出す騎士団員たち。
肩を寄せ合って右往左往する姿が、なんだか子犬みたいで可笑しい。

(もう……)

その必死さが胸にじんと染みて、思わず笑みがこぼれる。

「嬉しいよ。すごく実用的で」

にこりと笑って言うと、場が一瞬静まり――

「……よかったぁ……」

「焦った……」

「心臓に悪いですよ、お嬢様!」

あちこちから安堵の息が漏れた。

私は改めてナイフを手に取る。
重さは軽いのに、しっかりとした安心感がある。

(ちゃんと、考えてくれたんだ)

飾りでも、見栄えのためでもない。
“私が無事でいられるように”という、彼らなりの願いが込められている。

だから、もう一度しっかりと顔を上げて言った。

「本当に……ありがとう」

その言葉に、騎士団員たちは照れくさそうに、でも誇らしげに笑った。