第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「……そろそろ、頃合いかな」

「何がです?」

「離れたくない気持ちはわかるが…
さあ、行くよ」

「からかってます?
それよりどこへ――」

問い終える前に、ディランが私の手を取った。

「ちょ、ちょっと……」

半ば引きずられるように連れて行かれた先。

――ここは。

「……第3騎士団?」

思わず声が漏れる。

仕事の話だろうか。
そう思ったものの、辺りは異様なほど暗く、人気もない。

静かすぎる。
嫌な予感が、胸をよぎる。

(なに……?)

けれど隣のディランは、何事もない様子で奥へと進んでいく。

不安を抱えたまま、
促されるように扉を開けると――

「「「お誕生日おめでとうございます!!!」」」

……へ?

一斉に灯りがともり、
視界いっぱいに人の姿が広がった。

そこには第3騎士団の団員たち。
それに、ユウリ、セナ、テオ、アリス、ルイ、レオ。

――いつもの、顔ぶれ。

「お嬢様! お誕生日おめでとうございます!
さあ、どうぞ中へ!」

アレンに手を引かれ、
言われるがまま席に座る。

……なに、これ。

状況が追いつかず、
ただ呆然と周囲を見回した。

胸に残っていた不安が、
少しずつ、あたたかいものに溶けていく。

(……びっくりした)

けれど、それ以上に。

(……嬉しい)

そう思ってしまった自分に、
少しだけ、照れくさくなる。