第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

目を丸くしたディランに、
――しまった、と思う。

はっとして手を離そうとした、その瞬間。

ぐっと、強く引き寄せられた。

「ティアナ。
お誕生日、おめでとう」

低く、静かな声。

「君がこの世に存在してくれることを、
心から感謝している」

「……大袈裟な」

そう返したつもりだったけれど、
声は少し震えていた。

ディランの腕に包まれ、
熱を帯びた胸板に頬が触れる。

――近い。
けれど、嫌じゃない。

ふと顔を上げると、視線が絡んだ。

その瞳が、熱を帯びるのがわかる。
逃げ場を失ったように、息が詰まる。

伸ばされた手が、そっと頬に触れた。

「……ダメだな」

自嘲するように、ディランが呟く。

「君に会うと、こうも自制が効かなくなる。
待つと言ったのに……」

「……本当ですね」

そう言って、私は小さく笑った。

止めようとも、離れようともせずに。

(ああ、私は――)

この腕の中にいることを、
もう、拒めなくなっている。