第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「なんだか……夜空に降り立った女神様みたい」

真剣な顔で言われて、思わず笑ってしまう。

「それ、ユリアと似たようなこと言ってる」

「あの人の、お嬢様のスケッチ。すごかったよ
今度、お嬢様の似顔絵をくれるって言ってた」

「……そ、そんな約束してたの?」

「うん」

即答されて、言葉に詰まる。

「それ……いる?」

「うん、いる」

迷いのない返事。

「でも――」

少し照れたように、視線を逸らしてから。

「やっぱり、実物のほうがずっといい」

そう言って、テオはそっと私の手を取った。

「……こうやって、触れられる」

指先から伝わる体温に、
触れられた手がじわりと熱を帯びる。

(近い……)

それ以上、何も言えなくなる前に。

「……そろそろ行かないと。
また、あとで」

名残惜しそうに手を離し、
テオは静かにその場を去っていった。

残された手のひらには、
まだ、彼の温度だけが残っていた。

相変わらず自由だな。