第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

ディランと、一瞬だけ目が合う。
ふわりと、柔らかく微笑まれた。

――これだけは言える。
あの優しい瞳が、他の誰かを映すのは……いやだ。

「殿下、存分にわかりやすいですね」

「ええ、本当に」

レイさんとセナが、揃って小さく頷く。

そうして、ほどなくして会場はお開きになった。

――ああ、つっかれた。

気を張り続けていた糸が切れ、思わず本音が漏れる。
結局、料理にはほとんど手をつけられなかった。

部屋へ戻る廊下で、ふと見知った顔を見つける。

「お嬢さま」

「テオ」

「お誕生日、おめでとう」

「ありがとう。
でも、もうテオには十分お祝いしてもらったね」

この前2人でいった花畑での出来事を思い出す。

「警備の仕事は終わったの?」

「うん、もう少しでね」

少し間を置いて、テオが照れたように続ける。

「……ドレス姿を見たくて、探してた」

「ふふ」

私はドレスの裾を軽く持ち上げる。

「どう?」

「……会いに来た甲斐があった」

一歩、距離を詰めるテオ。
揺れる紅い瞳が、まっすぐに私を映す。

「本当に、綺麗で……可愛い」

その視線の熱に、
胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。