第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


「お嬢様」

「なに?」

「いま共鳴の力のこと考えてましたね」

「うん。最近使ってないから、感覚忘れそうで」

そういう私に、セナがふっと微笑む。
その笑顔に、少しだけ胸の奥が温かくなる。

「では、手を出して」

「こう?」

セナが私の背後にまわる。
静かな呼吸が背中越しに伝わり、自然と心が落ち着く。

「我が剣に従え、アクアマリン」

小さく呟くと、セナの魔宝石が淡く光る。
セナは私の手を優しく誘導し、剣を一緒に握らせる。

「合わせて」

「うん」

ゆっくりと、私たちの魔力が一つに重なる。
剣を一振りすると、氷の光が夜空に散り、まるで星屑が溶けて舞い落ちるように煌めく。
心がふわっと温かくなる、眩しくて甘い瞬間。

「できましたね」

「うん、きれい…」

「ティアナが、素敵な一年を過ごせますように」

耳元で囁かれたその甘い言葉に、思わず肩がぞくぞくしてくすぐったくなる。
自然と頬が熱くなり、胸の奥がぎゅっと幸せに締め付けられた。

私はセナをみる。

「セナも、素敵な一年になりますように」

私のその声に、セナは少し頬を赤くして笑う。
その笑顔が、夜空に輝く光よりも柔らかかった。