第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

私がいる蒼紋(そうもん)ラピスラズリ伯爵家、
そして迅晶(じんしょう)トパーズ伯爵家、
輝炉(きろ)シトリン伯爵家。

この三代伯爵家がそろった場で私は一通りの挨拶をおえた。

ふぅ……つ、疲れたー。

ディランから少し離れ、こそっとテラスに移動する。

「お嬢様、お誕生日おめでとうございます」

「セナ」

今日は護衛騎士として、私の警備にあたっている。

「ありがとう」

「だいぶ賑わっていましたね」

「そうかも。ディランがいるから余計目立つ」

「確かに」

私をじっと見つめるセナの視線に、
思わず、ドレスの裾をふっと持ち上げてみる。

「どう? ルイが仕立ててくれたの」

「とってもよく似合っております」

その真っ直ぐな褒め言葉に、少しだけ胸が温かくなる。

「でしょ。だけどこれ、腰回りピッタリすぎてご飯全然食べられない」

「それはまた大変ですね」

クスッと笑う声が、静かなテラスに柔らかく響く。
穏やかで、少しだけ甘い空気に包まれながら、私は深く息をついた。

「なんだか、こんなに穏やかでいいのかなー」

「いいに決まってますよ」

セナがすかさず返す。
本当に、こうして何もせず静かに過ごせる日は久しぶりだ。

私は小さく息をつき、手を伸ばす。
前に使った共鳴の力。まだちゃんと使えるだろうか――少し不安もあるけれど、胸がわくわくしている。