第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

兄は私の顔をじっと見つめ、何かを言いかけて、わざとらしく「ごほん」と咳をした。

「まあ、でも今日は誕生日なんだ。そんなこと気にせず楽しめよ」

少しだけ視線をそらしながら言うその声音は、いつもより柔らかい。

「優しいですね」

そう返すと、兄は一瞬だけ固まり、すぐに眉をひそめた。

「うるさい」

ぶっきらぼうに言い捨てながら、後頭部をがしがしとかき、照れ隠しのようにドアへ向かう。

「……じゃあ、支度しろよ。遅れるな」

そう言って、兄はそっぽを向いたまま部屋を出ていった。
閉まった扉を見つめながら、胸の奥がじんわり温かくなる。

誕生日の朝は、思っていたよりずっと優しい。


18歳の誕生日きっと特別な日になる。そんな気もする。