第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

テオが葉っぱの陰から顔を出し、頭を抱えてため息をつく。
「もう行った?」

「ああ」
セナは腕組みをし、軽く眉を上げて声をかける。

「テオ、人気者だね」

私がそういうと

「はあああ」

テオは盛大にため息をつく。

「そんなの嬉しくないよ!
あいつ、しつこいんだ。
何時に起きて何時に寝てるか?
ご飯は何を食べたか?靴下はどっちから履くか?とか……そんなの、どうでもいいじゃん!」

セナは思わず肩を震わせて笑う。

「随分と熱心なファンだな。だが、そこまで男に詮索されるの少し気持ち悪いな」

「そうだね……」
私も笑ってしまう。

テオは悔しそうに目をそらしながらも、小さく唸った。

「あいつ、第3騎士団の連中より鬱陶しい!」

その言葉に思わず笑う。
確かに、テオが来たとき、第3騎士団のみんなは彼にたくさん話しかけていた。

でも、こうやってテオが色んな人とかかわってくれるのは、悪いことじゃない。

『お嬢様しかいらない』

と言っていたテオが、少しずつ変わりつつある――そう思うと、自然と胸が温かくなる。
少し安心して、微笑みを浮かべる自分がいた。


チラッとテオと目が合う。
私の髪にさりげなくついたテオからもらった髪飾り――

「それ、つけてくれてるんだ」

「うん、可愛くて」

そう言うとテオが柔らかく微笑む。

「へへ、嬉しい」

「……あーあ。お嬢様になら、こんなに追いかけ回されたいのになぁ」

頬杖をつきながら笑うテオに、思わず私はくすっと笑ってしまう。

「変なこと言ってないで行くぞ」


「あ、ちょっと!」

セナがテオの襟を軽く引っ張る。
その後ろ姿を見送る。
賑やかで、ほんと心地の良い場所だ。


さて、私もそろそろ仕事に戻らないと。
ぐーっと伸びをする。